浜辺の茶屋から24年。亜熱帯の森に溶け込み、太平洋の海を望む大人の隠れ家が、さちばるの庭に誕生〈さちばるやーどぅい(南城市)〉


 [画像提供:株式会社さちばるの庭]

澄み切った青空を映す眩しい海と、数々の聖地で知られる南城市(なんじょうし)に、自然の中に暮らすようにステイできる「ヴィラ さちばるやーどぅい」が誕生した。太平洋に寄り添う森に溶け込む3棟の独立したヴィラ。息を呑むような美しい海を眺めることができるうえ、人里離れた傾斜地にゆったり配置されているので、心穏やかな滞在を楽しめる。



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このヴィラを建てたのは、海と浜辺以外は何もない場所で、ロケーションカフェの先駆けといわれている浜辺の茶屋を始めた稲福信吉(いなふく・のぶよし)さんだ。人間に喩えるとしたら素質とか個性にあたる地勢に、手を加えることなくそのまま生かす。その土地にもともと生きている植物や昆虫や動物たちの邪魔をしない。そのようにして、沖縄の自然と風土の魅力を体感できるよう整えたかった稲福さんは、「この場所が持っている潜在的な力を引き出したかった」のだという。



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「何にもないのがここにはあるんだよ」、と言葉を続ける稲福さん。この土地がもともと持っている価値を輝かせるために、心を込めて磨きあげ、「沖縄独自の土地のあり方」という作品に仕上げたのが、このヴィラなのだそうだ。造成工事に際しては、できる限り土地の起伏を平らにすることを控え、ガジュマルやアカギといった、この場所にずっと昔から自生してきた木々を極力残すようにした。「自分たちにとって心地よくなるからといって、彼らの生活を奪うことはしたくないじゃない。だから、メジロのためにこの辺りに自生している植物を、オオゴマダラのような蝶の幼虫のために彼らが好む食草を残すことは当然のことだったんだんだよ」。





 
普通ならばコンクリートで固める斜面を、琉球石灰岩を使って石積みにして保護をした。使用した石の9割はこの場所に元々あった琉球石灰岩だという。ちなみに、沖縄では布積み、相方積み、野面積みと3種類の石積み方法が継承されているが、さちばるやーどぅいやさちばるの庭では、そのすべてを見ることができる。このヴィラが、五感で自然の恵みを味わえる場所になった背景にはそういうこだわりがある。



 [画像提供:株式会社さちばるの庭]


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また、ヴィラから眺めることのできるのは、イノー(礁池)という、リーフに囲まれた浅瀬だ。魚の赤ちゃんが成長するのに絶好の場所なので、海のゆりかごと呼ばれることもある。大潮の日には、満潮の時には浜辺の茶屋の真下まで打ち寄せていた波が干潮の時には、700mくらいの沖合まで後退するので、潮の満ち引きを眺めながら地球のリズムを感じることもできる。そう、このヴィラの最大の価値は、沖縄の大地と寝食を共にできるという点にある。夜明けから日没まで、時間の移り変わりとともに変化する自然。ゆっくりと表情を変える空、鳥のさえずりや虫の鳴く声、そよいだかと思ったらぱらりと凪いで再び吹き抜ける風、緑滴る亜熱帯の木々や草花が見せる色。沖縄の自然の魅力や場の力を感じられる土地は、たくさんあるが、土地そのものと寝食を共にし、暮らすように滞在できる場所はそう多くはない。



 [画像提供:株式会社さちばるの庭]


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さて、ヴィラ さちばるやーどぅいの「さちばる」は沖縄の言葉で、崎(さち)にある原(ばる)のこと。集落から見ると岬に当たる場所なので、こう呼ばれてきたという。「やーどぅい」とは、琉球王朝時代の1700年代半ば頃から、経済的な理由で王府を離れざるを得なくなり、首里(しゅり)から地方に散らばった士族が、新たな生活の拠点にするために切り拓いた集落のことだ。稲福さんも琉球氏族の血を引いているそうで、「さちばるやーどぅい」というネーミングには少しこだわりがあるようだ。




同じように、3棟のヴィラには沖縄の屋号にちなんだ名前がつけられている。A棟は「ハンタヌイー」、B棟は「ジーハカヤー」、C棟は「ニーケーヤー」という具合だ。「ハンタヌイー」の「ハンタ」は崖のこと。「イー」は上のこと。斜面の上部に建っていることから名付けられた。「ジーハカヤー」の「ジー」は地面、「ハカヤー」は測る人。戸主が測量士であることを表している。「ニーケーヤー」の「ニーケー」は二階、「ヤー」は家のこと。二階建てという意味だ。沖縄の屋号は家の方位、位置、地勢、建物の種類、戸主の職業、本家か分家か、兄弟の何番目かなどでつけられている。自然だけでなく沖縄の文化にも触れてほしいという願いもあって、部屋の名前に屋号を使ったのだそうだ。



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「どんな人にも来てほしい。特に、沖縄らしい空気を吸いたいと思っている人にはぜひここでのんびり過ごしてほしいね。リアルな沖縄の人とも触れ合えるし、一緒に時間を過ごすこともできるし、沖縄の言葉を交たお喋りも楽しめる。浜辺の茶屋の目の前のビーチでは、焚き火だってできるし」。そう語る稲福さんは、天気がいい朝には、周辺の道路や施設の掃き掃除をしているし、タイミングが合えば、目の前に広がる手つかずの海でシーカヤックのガイドを引き受けてくれることもある。気さくな稲福さんと、ゆんたく(おしゃべり)を楽しんでみてはいかがだろう。

また、ヴィラの近くには沖縄の国造り神話に登場する創世神、アマミキヨのゆかりの場所がある。アマミキヨが最初に降り立ったとされるヤハラヅカサや、地域の人にとって尊い祈りの場所である浜川御嶽(はまがわうたき)、沖縄の稲作発祥の地といわれている受水走水(うきんじゅはいんじゅ)などだ。これらは徒歩圏内にあるので、散歩を兼ねて足を伸ばしてみるといいかもしれない。自然のなかでゆったりのんびり過ごすだけでなく、沖縄の文化に触れるチャンスにも恵まれているのもこのヴィラのおすすめポイントだ。



 [画像提供:株式会社さちばるの庭]


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他にも時間を忘れてしまいそうなアクティビティがいくつか用意されている。例えば、リラクゼーショントリートメント、ヨガ、「さちばるの庭」の散策、テラスでの星空観察など。リラクゼーショントリートメントは、沖縄の代表的なハーブである月桃や、アマゾンの森林に育まれた植物のオイルを使って、心と身体を包み込み、芯から癒してくれるはず。ヨガは、インドのトラディショナルヨガや、心身を解きほぐすリラックスヨガなど、内容やロケーションを選べるという。



 [画像提供:株式会社さちばるの庭]

日常から切り離されたこの場所で、きらめく海とみずみずしい森の恵みを同時に味わっていると、一つ、また一つと、まとっていたものがするりするりと脱げ落ちていくような気がしてくる。いつもの自分より素直になっていく感じもするし、人によっては、小さな喜びを大きな幸せとして感じられるようになるかもしれない。そのようにして、心を開きはじめると、他者も、自然も、この地球も、同じように私たちを受け入れようと胸を開いてくれるようだ。ヴィラで体験することになるはずの沖縄ならではの時間の過ごし方、物事の受け止め方、コミュニケーションのあり方が、立場にも職業にも地位にも縛られない、ありのままの姿に自分を戻してくれるかもしれない。

ヴィラさちばるやーどぅい
住所/沖縄県南城市玉城玉城18-13
電話/070-2322-8023(完全予約制)
Webサイト/ http://sachibaru-yado.com

沖縄CLIPフォトライター 福田展也

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